雑記:Vision Pro発表!「テクノロジー大手が狙うヘッドセットの覇権。メタとアップルの激しいライバル関係は新たな段階へ。」(CNBC)など読んで
AppleのVR/ARヘッドセット「Vision Pro」が発表されましたね。米国先行発売、お値段は約3,500ドル(約49万円)と高嶺の花なデバイスではありますが、注目度の高いデバイスです。
あえて分かりやすくVR/ARヘッドセットと書きましたが、Apple社のWebサイトには「VR」と言う単語も「AR」と言う単語も一切書かれていません。もちろん「MR」も「xR」ありません。
そこに書かれているのは「Welcome to the era of spatial computing.」(空間コンピューティングの時代にようこそ)です。まるで「VR」や「AR」を打ち消すように「spatial」と言う単語がちりばめられています。
すでに実際に実機を試した方の記事も出ていますね。
その体験は圧倒的なものもありつつ、まだ発展途上の部分もあるようです。その部分はこれから作り込まれていくのでしょう。気になったのは……
しかし、「Vision Pro」は最近のどのアップル製品とも大きく異なる点がひとつある。それは存在感が強く、周囲になじまないことだ。むしろ、その逆である。顔に装着し、日常生活をおくる上で非常に重要な感覚器官である目を覆ってしまう。これはほかのどのヘッドマウントディスプレイにも当てはまる。ARグラスであろうと、産業用のヘッドセットであろうと、完全に没入型のVRゴーグルであろうと同じだ。ヘッドセットの体験は確かに驚くべきもので、現実ばなれしている。しかし、そうした体験を得るには非現実的な部分を受け入れ、自由を犠牲にすることが求められる。そしてアップルですら、本質的に人の感覚の邪魔になる要素を製品から排除できなかったのだ。
「Vision Pro」を30分ほど使って取り外したとき、額に暑さは感じなかった。これはユーザーを思いやった製品設計であることを証明している。しかし、ほかのヘッドアップディスプレイを使い終わったときと同じように、「Vision Pro」を顔から外したときは解放された気分になった。外の空気のほうが、断然リアルに感じられる。
の部分ですかね。Vision Proは外の景色を見つつ、利用者の目を映し出す機能もあり、これまでのヘッドセットより周囲に馴染むものになっています。しかし、セットした髪の毛を崩し、目の周りのメイクを崩すものではあるでしょう。そして、外したときに解放された気分になるのはAppleでも解決できていないようです。
これはカバンやパンツのポケットもしくは片手を長時間占有しているiPhone、旧来の腕時計から手首を奪取したApple Watchに比べても格段に高いハードルです。ここをAppleがどうしていくのかはとても興味深い。体験で圧倒し、これを解決しないパワープレーもやってのけるかもしれません。
廉価版が出るとしたら数年先になると思いますが、多くの人がヘッドセットを装着するのが当たり前な日が来るのか!?個人的には来て欲しいのですが…別のデバイスが実現する未来が先にくるかもしれませんね。
Meta社のデバイスはどうなの?
「Quest 2」は標準のストラップでフィットネスをすると目の周りは蒸れ、顔に跡が残ります。体験時間が長いとメイクをしていない男性でもそのまますぐ外出とは行かないでしょう。「Quest Pro」は顔への圧迫が一切なくなりました。そのおかげでフィットネスしてても蒸れることなく、顔に跡が残ることもなく快適です。ただし、スーパーファミコン本体を超える重量を主に額で支えることになります。ボクは慣れたので気にしていませんが、利用者に強く慣れを強要するデバイスです。
もう1つ気になったのがこちらの記事。
タイトルは「Meta’s heated rivalry with Apple enters new phase as the tech giants go after headsets」。日本語版を書くなら「テクノロジー大手が狙うヘッドセットの覇権。メタとアップルの激しいライバル関係は新たな段階へ。」とかですかね。
「メタ社のVR/ARに対する取り組みやマーク・ザッカーバーグ氏とティム・クック氏の敵対関係をなぞりつつ…AppleやGoogleのようにプラットフォームを持たないMetaはメタバースでそれを狙っているけど、メタバースがメインストリームになるかは賭けだよねと。Vision Proに触れつつ、ディズニーの動向なども伝える。」と言った記事です。中でも気になったのは…
As CCS Insight analyst Leo Gebbie said, “If one company has the ability to transform the VR market overnight, it’s Apple.”CCS Insightのアナリストであるレオ・ゲビー氏は「VR 市場を一夜にして変革する能力を持つ企業があるとしたら、それは Apple です。」と述べています。
これは今回のAppleの発表を見てて思いましたね。Oculusから続く「VR」、そして社名まで変更して推している「メタバース」に軸を置いているMeta。それとは明確に「違う」が打ち出されたAppleの発表会。ぶっちゃけボクに刺さるものはほとんどなかったのにワクワクしました。
ボクはMeta社のQuest Proをほぼ毎日使ってます。VR空間で仕事もしますし、引きこもりなので運動の多くをVRに依存しています。だけど、あえていじわるに言えばこれって…ただのバーチャル・マルチディスプレイだし、没入感の高いNintendo Wiiなんですよね。(コミュニケーションは現実世界でお腹いっぱいなので…VR Chatなどコミュニケーション用途ではほとんど使っていません。ヘッドセットをかぶったままで、Web会議には出ますが……)
Appleの「空間コンピューティングの時代にようこそ」は、没入感の高いNintendo Wiiとは違うワクワクする未来を感じさせるものでした。
After previously touting the promise the metaverse, Disney recently killed its metaverse division under the leadership of Bob Iger, who returned to the company last year.On Monday, Iger took to the stage at Apple’s WWDC event and said his company’s streaming service would be available for the new headset. While some Disney content is available on Quest devices, Iger suggested that a whole new set of experiences are coming to Apple.“We’re constantly in search of new ways to entertain, inform and inspire our fans by combining extraordinary creativity with groundbreaking technology to create truly remarkable experiences,” Iger said during the keynote address. “And we believe Apple Vision Pro is a revolutionary platform that can make our vision a reality.”以前、メタバースの約束を宣伝していたディズニーは、最近、昨年同社に復帰したボブ・アイガー氏の指揮の下、メタバース部門を廃止した。月曜日、アイガー氏はアップルのイベントWWDCに登壇し、同社のストリーミングサービスが新しいヘッドセットで利用可能になると述べた。一部のディズニー コンテンツは Quest デバイスで利用できますが、アイガー氏は、まったく新しい体験が Apple に提供されるだろうと示唆しました。「私たちは、並外れた創造性と画期的なテクノロジーを組み合わせて、本当に素晴らしい体験を生み出すことで、ファンを楽しませ、情報を提供し、インスピレーションを与える新しい方法を常に模索しています」とアイガー氏は基調講演で述べた。「そして私たちは、Apple Vision Pro が私たちのビジョンを実現できる革新的なプラットフォームであると信じています。」
ディズニーがメタバース。そういえばそんなニュースありましたね。探してみると2021年のことでした。
そして、大規模レイオフとともにメタバース部門が廃止されたのが2023年3月。
で、2023年6月のAppleの発表会に出てきて「Vision Proは私たち(ディズニー)のビジョンを実現する画期的なプラットフォームです。」とか言っちゃうと。なるほど。ディズニー1社の動向でメタバース全体がどうにかなっちゃうわけではありませんが、未来から見たときに象徴的になりうるニュースですね。メモメモ。
記事の最後は以下で締めくくられています。嫌いじゃない意地悪さです。現時点で言うことあるわけないじゃん。
Meta didn’t immediately respond to a request for comment.Metaはコメント要請に応じませんでした。
さてさて。Appleの推し進める「空間コンピューティング」、Metaが推し進める「VR/AR」、「メタバース」。どちらが覇権を握るかは分かりませんが、選択肢が増えることは消費者として大歓迎です。コカコーラとペプシコーラのように、マクドナルドとバーガーキングのように、仲良くやりあってくださいな。ライバルは必要です。ボクは気分によって、そして用途によって色々選べる未来が良いです。どちらも頑張れ!どちらも使いたい!
「メタバース」と言う単語について思うこと
この単語を好きか嫌いかで聞かれたら嫌いです。その理由は意味がふわふわしているから。
「Metaverse」の初出はNeal Stephenson氏のSF小説「Snow Crash」。ここでの扱いはあくまでサービスの固有名詞だと思われます。
昨今使われている「メタバース」は「meta+verse」ですよねきっと。宇宙も含む万物を意味する「uni+verse」、多元宇宙を意味する「multi+verse」。じゃあ、「meta+verse」は何なんだと考えると「現実を超える世界」と言ったところでしょうか。
これだと誰が、現実の何を、どう「超える」のか、で意味が変わってきちゃう。それぞれのポジショントークになりがちで「メタバース」は1つの意味にはならず、あれもメタバース、これもメタバースになってしまう。なんにも「超えていない」単に没入感の高いバーチャル空間すら、メタバースになってしまうこともある。うーむ、好きになれない。
ボクは「精神と時の部屋」への憧れが強いので、VR(Virtual Reality)が好きです。「VR」と言う単語の意味はVR学会のWebサイトへどうぞ。
単語の定義をこねくり回すのは楽しいのだけどねぇ。